追懐 [173]
9月4日(日)雨 退院して378日 / 手術から460日
潮がひけば沖の方まで続く遠浅の海。
胸まで水に浸かった9歳か10歳の頃の自分が
手を引かれて海の中を歩いている。
少しからだが震えているのは
水の冷たさだけがその理由ではない。
それは、
自分の手をとって
海の中をいっしょに歩いてくれている女(ひと)が
ビキニを身につけた美しいお姉さんだったから。
だって50年近くも昔の田舎で、
ビキニを着る女性なんてそういなかったから。
うれしくもあり、誇らしくもあり、
そして少し恥ずかしくて困惑気味でもあり、、、、。
なつかしくも眩しい思い出。
自分より10以上も歳の離れたいとこで
幼心にも自慢の上品な美しい人だった。
そしてとてもやさしかった。
観音寺 有明浜
だが、
その記憶の中でも美しいその人が
今病床に伏して
意識のない状態がしばらく続いているという、、、、。
ああ、時はめぐり
時代は移りゆく。
しかし、
時の流れと逆行するように
思い出だけが
歳を重ねるごとに鮮やかに甦るようになってきた。
ああ、盛者必衰
ああ、諸行無常。
あああ、かなしい。