甦る場面 3 : 280
2月26日(日)曇後晴 退院して553日 / 手術から635日
手術から3週間が過ぎた頃。
夜の眠りが断続的ではあるが、
眠剤の助けを借りてようやく安定し始める。
それでも夜の睡眠は5時間弱といったところ。
顔と口内の腫れむくみがひどく、
鏡を見るたびに深いため息。
あごから首、肩にかけての
とんでもない突っ張り感で背筋も曲がり顔が上がらず、
横になろうが座ろうが
楽な姿勢というものがない。
呼吸も乱れ気味で、
朝晩2度の病室周辺の散歩さえまだつらかった。
手術時の
のどの傷が感染しており、
毎朝の診察はそこの治療がメイン。
午前2回、午後2回、計4回の抗生物質の注射が
1週間ほど前から連日続いていたのもストレスだった。
その頃唯一楽しみにしていたことが、
リハビリ科の療法士の先生が病室に来てやってくれるマッサージ。
毎日その20分ほどのことを
どれほど待ち焦がれていたことか。
そんなしんどい状況が続く中で、
毎日夕方になるとかけていたラジオから
松山千春が歌う
「津軽のふるさと」が流れる。
初めて聴く曲。
衝撃が走った。
そのはかなくも叙情的な旋律と歌詞。
歌われる状況が目に浮かぶ、、、、。
目頭が熱くなる。
その歌の放つものと
その頃の自分の心情とが深い部分でシンクロし、
それからのち
ことあるごとにその歌が頭の中でリフレインされる。
頭からはなれない。
りんごの ふるさとは
北国の果て
うらうらと 山肌に
抱かれて 夢を見た
あの頃の想い出 あゝ今いずこに
りんごの ふるさとは
北国の果て
退院して550日あまり。
今日も頭の中に
そのあまりにも切ない旋律が流れる。