少し自慢 : 742
11月7日(水)晴 退院して1174日 / 手術から1256日
まだあげ初めし前髪の
林檎のもとに見えしとき
前にさしたる花櫛(はなぐし)の
花ある君と思ひけり
やさしく白き手をのべて
林檎をわれにあたへしは
薄紅の秋の実に
人こひ初めしはじめなり
わがこゝろなきためいきの
その髪の毛にかゝるとき
たのしき恋の盃(さかずき)を
君が情(なさけ)に酌(く)みしかな
林檎畠(りんごばたけ)の樹(こ)の下に
おのづからなる細道は
誰(た)がふみそめしかたみぞと
問ひたまふこそこひしけれ
人生初めて自らの意思で暗唱した詩が、
この藤村の「初恋」だった。
高校1年の時だったか。
そのような初心(うぶ)な時代もありまして。
半世紀近く時を経た今でも
空で言えるのが懐かしくも少し自慢。
ああ
思えば遠くへきたもんだ、 と。