tongue twister のブログ

2015年5月26日、舌癌(StageⅣa)の手術(舌亜全摘・両リンパ節郭清・腹直筋皮弁による再建術)を受けました。ところが数日後の6月1日朝の診察で、まったくの突然に緊急再手術決定。なんと、最初の手術20時間、再手術13時間、計33時間(゜o゜;;

心身共に回復してきた今、それらの日々を振り返り、今度は私が誰かを励ますことができれば、との思いでブログ初挑戦です。 

終盤戦なれど : 1061


12月31日(日)曇時々雨 退院して3069日 / 手術から3151日


暖かい年末だ。
連日日中の気温が15度前後だなんて、
やはり身震いするほどの寒さでないと、
大晦日という雰囲気が希薄だ。



術後8年半が過ぎた。
10月の検診で、
今後PET-CTの必要はないでしょうとの担当医の言葉。
再発転移のおそれのある者でないと、保険適用にならなくなるらしい。
保険適用でも3万数千円かかるが、
それでも年に1度の全身の癌検診になるのなら、
被爆の問題はあるもののずっと受け続けてもいいくらいに思っていたので、
少し残念でもある。



今年6月に一人息子も結婚し、
親としての務めもほぼ終わった。
これからは自分のことだけを考えて生きればよい。
健康面においても、どうにか大過なく過ごせている。
そうなると我が空気頭の中は、
これからの人生終盤戦をいかに面白おかしく過ごそうか、
もうそのことしかない。



既に終盤戦。
されど終盤戦。


1年の最後の夜を
酒食らいながらあれこれ夢想する。


  

「さびしぃーっ」: 1060

11月30日(木)曇 退院して3038日 / 手術から3120日


山中での観光施設の管理の仕事を始めて、はや半年が過ぎた。
北海道から沖縄まで、全国各地からいろんな方々がやってくる。
ただ、老境に差しかかった方々の一人旅は、
一様にどこかさびしげで愁いを帯びている。
それは自分が勝手にそう見ているだけなのか。
ともあれ、半年ほどの間にも、いろんな出会いがあった。


その観光施設も紅葉のシーズンが終わり、
明日から2月末までの3ヶ月間は冬季閉鎖。
そこでの仕事は週に2回のパトロールだけとなる。




ここ最近、いろんな事に対して、
以前ほどの熱を以て望めない自分がいる。


外吞みより家吞みを好むことが多くなった。
寒くなり絶好のシーズン到来なのに、ソロキャンプへ気持ちが向かない。
カメラを持ち出しても、これまで程写欲をそそられない。
一人旅も、オーバーツーリズムの報道などで、すっかりその気が失せた。
バイクも、その250kg超の巨体を、車庫から出すのが億劫だ。



なんだかなぁ。
谷村新司さんが亡くなられてからというもの、
なにやら得体の知れない大きな喪失感と寂しさを覚えていたところに、
11月になって、大学生の時の下宿先輩の訃報。
ひじょうに応えた。
やりきれぬ鬱々たる思い。


冗談でなく、
谷村さんより少し前に鬼籍に入られた財津一郎さんばりに、
「ひじょーにきびしーっ」
と心の底から、大声で連呼したい心境だ。



まあ、そんなこんなを経ながら、
人は徐々に老いてゆくのだろうけれども、
だが一方で、まだこのままではいかんとの思いもある。


人生の先輩方すべてが辿って来た道。


捲土重来。


              

The sun also rises on you. : 1059

11月10日(金)雨 退院して3018日 / 手術から3100日


大病を得て4ヶ月にも及ぶ入院生活を過ごしたのは、
もう8年も前のことになってしまった。
当時の一喜一憂の場面が事あるごとに思い出されて、今となってはなにやら懐かしい。


先日、入院に関わる各種書類をまとめて放り込んでいるクリアファイルを
取り出して何気なくパラパラとめくってみた。
40枚のポケットでは収まりきらずぱんぱんに膨らんでいる。


その中の、「口腔がん根治切除術に関する説明書」
というぎっちりA4 4枚にも及ぶ項目の
「舌・歯肉・口腔底の切除によっておきること」の部分に目が留まる。


列挙してみる。
1  創部とその周辺、耳たぶの感覚低下
2  上肢挙上制限(リハビリ必要)
3  口角が下がるなどの顔面神経麻痺 
4  舌のジンジンとするしびれ(全摘でもそう感じる)
5  摂食・嚥下障害(亜全摘以上になるとむせや誤嚥多く、肺炎を起こすことがあり、
         食べ物の形態を選ぶ リハビリ必要)
6  咀嚼障害  (堅いものは食べられず、軟らかい食事が基本に)
7  開口障害(リハビリ必要)
8  構音障害(切除範囲により程度の差があり、リハビリ必要)


自分の場合、舌根部4分の1のみ残るほぼ全摘に近いので、
上記の不具合のほとんどを経験した。
そして1と4については、もう今以上の改善は難しいのだろうが、
そんなことはたいした問題でなく、違和感あってもすぐに慣れる。


一般的に日常生活を送る上でいちばん大きな問題となるのは、
5、6、8に違いないが、
自分の場合、大方の医療関係者の常識を打ち破り、
むせや誤嚥など退院してから今まで、1度もない。
堅いものが食べられない、なんてことは全くなく今では何でも食べられる。
ただ、パンとかかぼちゃみたいなものは確かに食べにくく苦手とするが、
水分があれば大丈夫だ。
ベロのほとんどを失ったのだから味を感じられず、
食べる楽しみも失われるのではないかと落ち込んだときもあったが、
それさえも杞憂に終わった。
味蕾は、舌だけでなく、ほっぺや喉にもある。そりゃ元通りとはいかないが、
元の7~8割位は感じられていると思う。
それどころか、100%いけていると感じる食べ物も多い。


8の喋りに関しても退院して数ヶ月は、
電話や宅配便には居留守を使い、
買い物には、話す必要がない店限定で出かけるなど、
人との接触を恐れてびくびくしながら暮らしていた。
ところが自分なりにリハビリを重ねてある程度回復し、
そしてこのことが更に重要なのだけど、
「うまく話せない」という自身を受け入れるとともに、
そのことを外へさらけ出す度胸が据わってからは、
電話で飲み屋の予約もするし、
もうどこへでも出かけ、誰とでも関われるようになった。
ただし、全摘であるが故にいくら練習しても出せない音はある。
そこは発音しやすい他の言い回しに変えるとか、
前後の言葉で相手に類推してもらえるようにするとかの工夫が必要だ。


そして悲しいことに、端から自分らのような喋りにくい者に対して、
聞く耳を「持とうとしない」人種が少なからず存在するのも現実。
そういう類いの人には、いくら丁寧に話しても心通わず通じない。
そんなときには、速やかに言葉少なくその人から離れることにしている。
そしてそれこそが Cancer Gift であると心ひそかに感謝する。
この病気を得たことで、人を見る目がひとつ養われたと。



同病同士の方々、
食もお喋りも、今よりも必ずよくなりますから。
口が開かなかったり腕が上がらなかったりなど、
数ヶ月軽くリハビリしつつ日常生活を送っておれば自然に改善しますから。
退院してしばらくは、食べることが苦痛そのもので「食は修行なり」などと
自嘲気味にうそぶいていたこの私が、
現在はいやしげに食を楽しんでいるのですから。


大事なことは、
諦めずに微速前進。
1歩前進2歩後退で、たまに3歩前進。
そして、以前とは違った自分を受け入れ、
それをありのまま外へさらけ出す第一歩を踏み出すこと。


健闘、心から祈っています。