渇望 : 1044
2月27日(月)晴 退院して2766日 / 手術から2848日
三寒四温を繰り返しながら
少しずつ春の足音が近くに聞こえるようになってきた。
来週には梅も満開の時を迎え、
微風にのって馥郁たる香りが漂うだろう。
夜桜ならぬ、夜梅を楽しみに出かけるのも一興か。
桜のような儚くも妖艶な見た目は期待すべくもないが、
夜の闇に漂う香を独り占めもいいものかもしれない。
九州の旅から戻ってきてはや2週間が経つ。
波風なく平凡に暮らせることこそが、
人生で最もありがたきこと。
それは分かる。
だが、何かが足りない。
刺激とか、緊張感だとか、非日常的なこととか。
やはり旅だな。
それも一人旅でないと駄目だ。
ある本の中の言葉が、ストンと腹に落ちる。
「大事なことに気づくのは、
いつも旅の途中だった。
旅することで、
自分が自分になっていく」
その通りだと思う。
旅にも苦労や不便なことはたくさんある。
感傷と孤独を嫌というほど味わうこともある。
だがそれらさえもが、
自身を飾ることなく見つめさせ、
そして平凡な日常の大切さに気づきを与えてくれる。
この歳になって「自分探し」もどうかと思わないでもないが、
若い頃に思う存分旅をしなかった反動なのかもしれない。
20代なかばで貪るように読んだ沢木耕太郎さんの「深夜特急」
今も私の中で、
旅への憧れをかき立てるバイブルであり続けている。