遠雷 そして5年前 : 951
8月30日 (日) 晴後曇 退院して1836日 / 手術から1918日
夕刻前から空が急に黒い雲で覆われ始めた途端、
庭の植木がいっせいに風に揺らぎだす。
そして、遠雷。
夕立は5分も経たないうちに止み、
あれでは草木が可哀相だが、
熱を蓄えた地表は少しは冷やされようで、
開け放った南に向いた縁側からひんやりと風が入り込む。
5年前の入院時からずっとパソコンで書き留めている
『入院とそれに続く日々の記録』と自ら題した記録に目を通す。
5年前の今日は、退院してまだ8日目。
夕食のことが書かれてある。
「夕食はスープスパゲッティ。
口の中で麺が滑るようで食べにくい。
今夜もイラつきながら30分ほどかけて食事を終える」
退院して半年近くは、
食事の度に脂汗流しながらまるで格闘のよう。
食べることは修行なり、
などと焦りと絶望を自ら誤魔化すようにうそぶいていたあの頃が、
今となってはいとおしい。
人の身体の不思議。
回復を念じ続けての現在がある。
今なら10分でいける。